菖蒲氏(しょうぶ-し)は波多野氏の分流の一つ。中世石見国長野荘(島根県益田市)の領主で、益田氏や吉見氏に従った。のち大内氏や毛利氏に従った波多野氏はこの一族と思われるが要検討。

起源

波多野遠義の子実経が相模国足上郡菖蒲(神奈川県秦野市菖蒲)を領知したことを起源とする。

展開

菖蒲実経の子実盛が承久の乱(1221)の恩賞として石見国長野荘黒谷郷・美濃地村(島根県益田市美濃地町・上黒谷町・桂平町周辺)の地頭職を得て、以後嫡流が黒谷郷を、庶流が美濃地村を継承した。両地を巡っては、室町時代に益田氏と吉見氏が度々争ったため、両者の間で翻弄された。波多野氏とも称した。

周防守護大内氏家臣の波多野氏、伯耆国の杉原氏重臣の菖蒲氏は同族と思われるが要調査。

現代の分布

山形県寒河江市(300人)、佐賀市(200人)、長崎県諫早市(120人)の順で多い。それぞれ付近の「菖蒲」を含む地名によるものと思われる。

諫早市に次ぐ島根県出雲市(70人)は波多野氏流菖蒲氏の拠点に比較的近いが要調査。中国地方の地名では島根県邑智郡邑南町菖蒲、鳥取市菖蒲、岡山市北区菖蒲がある。

中国地方西部の波多野氏

史料上、菖蒲氏は単に波多野氏と称すことも多かった。周辺の波多野氏の分布を確認すると、島根県では大田市(200人)に最も多く、近県では山口県萩市(400人)・山口市(300人)・周南市・宇部市・下関市(各200人)の順で多い。

主な参考文献

  • 平凡社編『日本歴史地名大系』(平凡社,1979-2004)
  • 平凡社編『日本歴史地名大系』(平凡社,1979-2004)
  • 太田亮『姓氏家系大辞典』(姓氏家系大辞典刊行会,1934-1936)
  • 宮本洋一『日本姓氏語源辞典・人名力』(name-power.net
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