読み

 「佐藤」の読みは、一般に「さとう」(/saꜜtoː/)である1

表記

 表記は、一般に「佐藤」である。

異表記

 一方、「佐」および「藤」とは異なる文字による表記も存在する2

俗字・誤字による表記

 俗字・誤字(社会一般に正しいと認められた文字以外の文字)による表記が、以下49種類が確認されている3

図1.佐藤の俗字・誤字表記(49種)
異体字による佐藤の表記 これらはあくまで“確認された”表記に過ぎないため、実際の戸籍上にはさらに多くの表記が存在してきたと思われる。
俗字・誤字の発生原因とその将来 戸籍上の姓において、俗字や誤字の存在が許容されていたのは、従来(1994年まで)、戸籍が手書きの文書で管理されていたことによる。今後は、コンピューターでの戸籍管理が浸透することにより、姓の表記は正字のみに収束していくことになる。

同音異字による表記

 同じ「さとう」でも、異なる字種による表記が10数種確認されている。

  1. 佐東(約1,300人/山形県東村山郡)
  2. 左藤(約500人/大分県玖珠郡・石川県七尾市・神奈川県海老名市など)
  3. 左東(約120人/徳島県名西郡・大分県佐伯市)
  4. 佐当・佐當(約50人/大分県豊後高田市・兵庫県淡路市)
  5. 砂藤(約50人/青森県八戸市)
  6. 砂糖(約50人/宮崎県日南市など)
  7. 佐登(約50人/北海道・大阪府・兵庫県・広島県)
  8. 佐籐(約10人/山形県など)
  9. 左登(約10人/富山県砺波市)
  10. 砂東(約10人/大分県日田市)
  11. 沙藤(約10人/大分県由布市)
  12. 佐嶋(約10人/岩手県奥州市)
  13. 佐等(約10人/不詳)

 多くの場合、近隣に佐藤氏も分布していることから、もとは佐藤であったが、分家・別家などを機に本家との区別のため別字に変更したと考えるのが自然である。

 ただし、例外もある。上記のうち(1)佐東氏と(2)左藤氏については、一部の地域で佐藤氏とは関係しない伝承がある4。また、(11)佐嶋氏は、一般に佐島(さじま)氏の異形であって、佐藤氏とは関係しない系統が多数であるが、岩手県奥州市で「佐藤から佐嶋に改めた」との伝承があり、同地周辺の佐嶋氏に限って佐藤氏の系統である。(6)砂糖氏(約50人/宮崎県日南市など)については、宮崎県日南市や鹿児島県で「砂糖を扱っていた商人に因む」との伝承があり、佐藤氏とは関係しない。

ローマ字による表記

日本語のローマ字表記(ラテン文字による表記)は、統一的・支配的な表記の方式が存在しない5。方式ごとの「佐藤(さとう)」の表記は下表の通りである。

表1.佐藤のローマ字表記
方式表記
旧ヘボン式旅券法施行規則Sato / Satoh
駅名標Satō
修正ヘボン式英米規格Satō
道路標識Sato
訓令式(ISO 3602)Satô
日本式Satô / Satō / Satou
コンピューターのキーボード入力Satou

佐藤のローマ字表記は「Sato」が一般的で、これに発音区別符号を付して「Satō」「Satô」とすることもある。場合によっては「Satoh」「Satou」の表記も許容される。

参考資料


  1. 『全国の苗字(名字)11万種』によれば、稀に「さどう」「さとお」「さと」「さいとう」「そとう」「さふじ」の読みも実在するというが、誤記も含むと思われるため要検討。 ↩︎

  2. 宮本洋一「編集方針・凡例・用語集」『日本姓氏語源辞典・人名力』 ↩︎

  3. 「外字苗字検索」『全国の苗字(名字)11万種』)での「さとう」の検索結果より。 ↩︎

  4. 佐東氏が最も多い山形県東村山郡中山町では安芸国佐東郡(広島県広島市安佐南区周辺)に因むとの伝承がある。左藤氏では、宮城県伊具郡に「左手で藤を献上したことに由来する」との伝承、神奈川県海老名市に「左藤紋(不詳/左回りの片手藤や藤巴か?)を下賜されたことに由来する」との伝承、石川県七尾市に「平野左近という人物に由来する」との伝承がある。〔宮本洋一『日本姓氏語源辞典・人名力』↩︎

  5. 「ローマ字 - Wikipedia」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E5%AD%97) ↩︎

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