2. 佐藤氏の系図（一覧）
系図編

佐藤氏の系図（一覧）

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この記事では，全国に伝わる佐藤氏の系図のうち，自治体史等で活字化またはデータ化されているものを分類し，一覧化する。なお，当記事の「凡例」および「参考文献」は記事下部に掲載する。

系図集所収の系図

#名称本拠地類型備考出典
1尊卑分脈-その他鎌倉時代まで『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集』
2常陸増井系図茨城県常陸太田市増井町陸奥1型鎌倉時代まで『続群書類従』
3美濃伊深系図岐阜県美濃加茂市伊深町陸奥1型近世旗本『寛政重修諸家譜』
このほか，『寛政重修諸家譜』には「伊深系図」のほかにも佐藤氏関連の系図が10数点所収されているが，いずれも出自不詳の断片的な系図である。

「尊卑文脈」は14世紀末の成立で全体として比較的信頼度が高い。一方，「増井系図」は「尊卑分脈〉」との異動が多く，また，「伊深系図」は江戸時代末期の成立で，中世以前の記述は粗雑で信頼できない。

これらは知名度が高く，多数の書籍等で参照されている。言い換えれば，これらの系図についてのみ検討して佐藤氏の起源を解明しようとする書籍等が多い。しかし，実際には，佐藤氏の系図は後掲のとおり多種多様であって，ごく一部に過ぎない。

個別の家に伝わる系図

以下は，各地の各家系で継承された系図である。

東北地方

陸奥国

#名称本拠地類型備考出典
1陸奥永井系図岩手県一関市花泉町永井陸奥1型中世葛西氏家臣『大鳥城記』
2陸奥小斎系図宮城県丸森町小斎陸奥1型近世仙台藩士『ふるさと小斎の歴史』
3陸奥保原系図福島県伊達市保原町陸奥2型近世仙台藩士『佐藤一族』
4陸奥中村藩系図福島県相馬市？陸奥1型近世中村藩士『大鳥城記』
5陸奥磯部系図福島県相馬市磯部陸奥1型近世中村藩士『大鳥城記』
6陸奥町屋系図福島県白河市大信町屋陸奥2型中世結城氏家臣『佐藤一族』

中世の佐藤氏の動向を知る上では，「永井系図」（岩手県一関市）と「小斎系図」（宮城県伊具郡丸森町）が特に重要である。両者はともに佐藤忠信の系統で，陸奥国信夫郡（福島県福島市）を離れて出羽国置賜郡（山形県米沢市）の小領主となった後，一方は登米郡（宮城県登米市）周辺の葛西氏に仕え，他方は岩崎・岩城郡（福島県いわき市）の岩城氏を経て伊達氏に仕えた。

出羽国

#名称本拠地類型備考出典
1出羽綴子系図秋田県北秋田市綴子陸奥1型中世北畠氏等家臣『秋田県「佐藤一族」の系譜と本拠口碑』
2出羽西馬音内系図秋田県羽後町西馬音内陸奥1型中世小野寺氏家臣『佐藤一族』
3出羽下小泉系図山形県酒田市小泉陸奥1型『飽海郡誌』
4出羽宮曽根系図山形県庄内町宮曽根陸奥1型中世飽海郡中山城主，陸奥国玉造郡より来住『佐藤一族』，『大鳥城記』
5出羽入間系図山形県西村山郡西川町入間陸奥2型中世寒河江氏・最上氏家臣『寒河江市史』
6出羽村木沢系図山形県山形市村木沢陸奥1型中世最上氏家臣『佐藤一族』

中世の佐藤氏の動向を知る上では，「宮曽根系図」（山形県東田川郡庄内町）が比較的重要である。前項の陸奥国永井・小斎の佐藤家は忠信系であるのに対し，宮曽根の佐藤家は継信系を称する。なお，宮曽根佐藤家の先祖も，南北朝時代には陸奥国の遠田郡（宮城県遠田郡）・玉造郡（宮城県大崎市）にいたが，敗戦して出羽国飽海郡に来住したという。

中部地方

#名称本拠地類型備考出典
1越後南中系図新潟県長岡市与板町南中陸奥2型-『佐藤一族』
2美濃川小牧系図岐阜県富加町加治田川小牧陸奥2型中世土岐・斎藤・織田氏等家臣『富加町史』
3美濃八幡系図岐阜県武芸川町八幡紀伊型-『佐藤一族』
4美濃岩村藩系図岐阜県恵那市岩村町？その他近世岩村藩士『佐藤一族』
5伊勢肥留系図三重県松坂市肥留町陸奥1型中世北畠氏家臣『福島市史』，『佐藤一族』

中世の佐藤氏の動向を知る上では，「肥留系図」が特に重要で，同系図を含んだ一連の文書群「佐藤家文書」（国指定重要文化財／石水博物館所蔵）もまた重要である。同文書によれば，当家は南北朝時代前期に信夫佐藤氏を代表する役割を担っていたと思われるが，平安時代末期の佐藤元治（および継信・忠信）の系統ではなく，元治の弟の系統にあたるという。

中国・四国地方

#名称本拠地類型備考出典
1美作三明寺系図岡山県岡山市北区建部町三明寺陸奥1型中世室町幕臣，大和国より来住『佐藤一族』
2阿波伊月系図徳島県阿波市市場町伊月陸奥2型中世三好氏等家臣『佐藤一族』

「三明寺系図」は記載が比較的豊富である。

九州地方

#名称本拠地類型備考出典
1豊前上秣系図大分県中津市三光上秣相模型中世麻生氏家臣「史料編纂所データベース」
2豊後福宗系図大分県大分市福宗その他中世大友氏家臣「サトウ経営労務管理事務所」

どちらも波多野氏流との関連を窺わせる記載になっている点が特徴的である〔「九州地方の佐藤氏」参照〕。

凡例

表の用語

用語定義
名称各系図を区別するための当サイト独自の呼称
本拠地系図を継承した家系の本拠となる場所
類型系図の系統の類型（後述）
備考系図を継承した家系の身分，職業等
出典系図が掲載されている書籍等

類型

平安時代後期ごろの拠点・人物によって以下のとおり分類した。

類型定義
陸奥1型陸奥1型先祖を藤原師清とし，拠点を陸奥国信夫郡とする類型
陸奥2型陸奥2型先祖を藤原公郷とし，拠点を陸奥国信夫郡（または出羽国）とする類型
相模型相模型先祖を藤原公俊（波多野経範）とし，拠点を相模国波多野荘とする類型
紀伊型紀伊型先祖を藤原季清とし，拠点を紀伊国那賀郡とする類型
その他その他上記に該当しないか当時の先祖について記載のない類型
上記特徴と完全に一致していなくても，それに類似する特徴を持つ系統も含む。また，厳密には，陸奥佐藤氏と相模佐藤氏はともに紀伊佐藤氏の分流にあたる。

公輔─師清は「陸奥小斎系図」，これ以外は「尊卑分脈」による。なお，公輔は「尊卑分脈」では公季の子として記載があるが，師清は記載がない。

参考文献

系図集

  • 『寛政重脩諸家譜』（第5輯・第8輯，國民圖書，1923）
  • 塙保己一編，太田藤四郎補『続群書類従』（第6輯，下，続群書類従完成会，1957）
  • 藤原公定撰「新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集5」（『故実叢書』第3輯，吉川弘文館，1903）

個別の家系図

  • 窪田文夫『ふるさと小斎の歴史』（窪田文夫．1988）
  • 斎藤美澄編『飽海郡誌』（巻之八，山形県飽海郡，1923）
  • 寒河江市史編さん委員会『寒河江市史』（寒河江市，1994）
  • 佐藤清隆『佐藤一族：家系と歴史』（東洋書院，1981）
  • 佐藤徳蔵『秋田県「佐藤一族」の系譜と伝承口碑』（秋田文化出版社，1980）
  • 佐藤芳寿『先祖を想う：軽井沢宿本陣佐藤家の歴史』（佐藤芳寿，1979）
  • 菅野円蔵編『大鳥城記』（飯坂町史跡保存会，1970）
  • 富加町史編集委員会編『富加町史』（下巻，富加町，1980）
  • 富田礼彦『斐太後風土記』（大日本地誌大系刊行会，1915-16）
  • 福島市史編纂委員会編「佐藤家譜」（『福島市史』第6巻，福島市教育委員会，1969）
  • 松平定能『甲斐国志』（甲陽図書刊行会，1911-1912）

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