1. 佐藤氏の系図(総説)
系図編

佐藤氏の系図(総説)

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凡例

  • 名称:各系図を区別するための当サイト独自の呼称。
  • 本拠地:系図が継承した家系の本拠となる場所。
  • 類型:系図の系統の分類(後述)。
  • 備考:系図を継承した家系の身分,職業等。
  • 出典:系図が掲載されている書籍等。

類型について

平安時代後期ごろの系図の記述によって分類する。

  1. 陸奥型:平安時代末期の陸奥国信夫郡を拠点とした一族を祖先とする系統。
    • 1型:平安時代後期の藤原師清を祖先とする系統。
    • 2型:平安時代後期の藤原公郷を祖先とする系統。拠点は出羽国とも。
  2. 紀伊型:平安時代後期に紀伊国那賀郡を拠点とした佐藤氏(紀伊佐藤氏)を祖先とする系統。陸奥・相模系は,ともに紀伊系から派生した系統。
  3. 相模型:平安時代後期より相模国波多野荘を拠点とした系統。
  4. その他:上記のいずれにも分類できない系統。表中では「-(ハイフン)」で示す。

上記特徴と完全に一致していなくても,それに類する特徴を持つ系統も含みます。

陸奥1型 陸奥2型 紀伊型 相模型 その他

系図集所収の系図(3点)

#名称本拠地類型備考出典
1 尊卑分脈 - 紀伊型 鎌倉時代まで『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集』
2 常陸増井系図 茨城県常陸太田市増井町 陸奥1型 鎌倉時代まで 『続群書類従』
3 美濃伊深系図 岐阜県美濃加茂市伊深町 陸奥1型 近世旗本『寛政重修諸家譜』

これらは知名度が高く,多数の書籍で参照されている。〈尊卑文脈〉は14世紀末の成立で全体として比較的信頼度が高い。一方,〈増井系図〉は〈尊卑分脈〉との異動が多く,〈伊深系図〉は江戸時代末期の成立で,近世の記述は詳細で信頼できるが中世以前の記述は粗雑で不審。

なお,『寛政重修諸家譜』には〈伊深系図〉のほかにも10数点の佐藤氏関連の系図が所収されているが,いずれも出自不詳の断片的な系図である。

個別の家に伝わる系図(40点)

以下は,各地の各家系で継承された系図で,主に郷土史の書籍等で確認を行った。全40点中26点が東北地方の系図である。

東北地方

陸奥国

#名称本拠地類型備考出典
1 陸奥永井系図 岩手県一関市花泉町永井 陸奥1型 中世葛西氏家臣 『大鳥城記』
2 陸奥小斎系図 宮城県丸森町小斎 陸奥1型 近世仙台藩士 『ふるさと小斎の歴史』
3 陸奥保原系図 福島県伊達市保原町 陸奥2型 近世仙台藩士 『佐藤一族』
4 陸奥中村藩系図 福島県相馬市? 陸奥1型 近世中村藩士 『大鳥城記』
5 陸奥磯部系図 福島県相馬市磯部 陸奥1型 近世中村藩士 『大鳥城記』
6 陸奥町屋系図 福島県白河市大信町屋 陸奥2型 中世結城氏家臣 『佐藤一族』

出羽国

#名称本拠地類型備考出典
1 出羽綴子系図 秋田県北秋田市綴子 陸奥1型 中世北畠氏等家臣 『秋田県「佐藤一族」の系譜と本拠口碑』
2 出羽西馬音内系図 秋田県羽後町西馬音内 陸奥1型 中世小野寺氏家臣 『佐藤一族』
3 出羽下小泉系図 山形県酒田市小泉 陸奥1型 『飽海郡誌』
4 出羽宮曽根系図 山形県庄内町宮曽根 陸奥1型 中世飽海郡中山城主,陸奥国玉造郡より来住 『佐藤一族』,『大鳥城記』
5 出羽入間系図 山形県西村山郡西川町入間 陸奥2型 中世寒河江氏・最上氏家臣 『寒河江市史』
6 出羽村木沢系図 山形県山形市村木沢 陸奥1型 中世最上氏家臣 『佐藤一族』

中部地方

#名称本拠地類型備考出典
1 越後南中系図 新潟県長岡市与板町南中 陸奥2型 - 『佐藤一族』
2 美濃川小牧系図 岐阜県富加町加治田川小牧 陸奥2型 中世土岐・斎藤・織田氏等家臣 『富加町史』
3 美濃八幡系図 岐阜県武芸川町八幡 紀伊型 - 『佐藤一族』
4 美濃岩村藩系図 岐阜県恵那市岩村町? その他 近世岩村藩士 『佐藤一族』
5 伊勢肥留系図 三重県松坂市肥留町 陸奥1型 中世北畠氏家臣 『福島市史』,『佐藤一族』

中国・四国地方

#名称本拠地類型備考出典
1 美作三明寺系図 岡山県岡山市北区建部町三明寺 陸奥1型 中世室町幕臣,大和国より来住 『佐藤一族』
2 備後神辺系図 広島県福山市神辺町 紀伊型 - 『佐藤一族』
3 阿波伊月系図 徳島県阿波市市場町伊月 陸奥2型 中世三好氏等家臣 『佐藤一族』
「備後神辺系図」は,系図の存在と系統について『佐藤一族』に記載があるのみで,詳細は不明。

九州地方

#名称本拠地類型備考出典
1 豊後上秣系図 大分県中津市三光上秣 相模型 先祖は相模国御家人,中世大友氏家臣 「史料編纂所データベース」
2 豊後福宗系図 大分県大分市福宗 その他 中世大友氏家臣 佐藤政敏氏Webサイト

中でも「肥留系図」は,「佐藤家文書」(国指定重要文化財/石水博物館[三重県津市垂水]所蔵)のうちの系譜。南北朝時代に信夫佐藤氏を統率した家系に伝わった文書で,中世の信夫佐藤氏に関する諸家伝の中では特に信頼度が高い。

参考文献

系図集

  • 『寛政重脩諸家譜』(第5輯・第8輯,國民圖書,1923)
  • 塙保己一編,太田藤四郎補『続群書類従』(第6輯,下,続群書類従完成会,1957)
  • 藤原公定撰「新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集5」(『故実叢書』第3輯,吉川弘文館,1903)

個別の家系図

  • 窪田文夫『ふるさと小斎の歴史』(窪田文夫.1988)
  • 斎藤美澄編『飽海郡誌』(巻之八,山形県飽海郡,1923)
  • 寒河江市史編さん委員会『寒河江市史』(寒河江市,1994)
  • 佐藤清隆『佐藤一族:家系と歴史』(東洋書院,1981)
  • 佐藤徳蔵『秋田県「佐藤一族」の系譜と伝承口碑』(秋田文化出版社,1980)
  • 佐藤芳寿『先祖を想う:軽井沢宿本陣佐藤家の歴史』(佐藤芳寿,1979)
  • 菅野円蔵編『大鳥城記』(飯坂町史跡保存会,1970)
  • 富加町史編集委員会編『富加町史』(下巻,富加町,1980)
  • 富田礼彦『斐太後風土記』(大日本地誌大系刊行会,1915-16)
  • 福島市史編纂委員会編「佐藤家譜」(『福島市史』第6巻,福島市教育委員会,1969)
  • 松平定能『甲斐国志』(甲陽図書刊行会,1911-1912)

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